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長野法律事務所ホームニュース・ブログ損害賠償(交通事故ほか)【3分解説】スーパー天ぷら転倒裁判(東京地判令和2年12月8日)

【3分解説】スーパー天ぷら転倒裁判(東京地判令和2年12月8日)

店舗を運営されている皆様の参考になる判決が、東京地方裁判所で令和2年12月8日に出ましたので、3分で解説させていただきます。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/999/089999_hanrei.pdf

(令和4年4月22日追記 こちらは、東京高裁で請求が棄却され、 令和4年4月21日に上告が棄却されています。 )

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE22ADZ0S2A420C2000000/

【事案の概要】

本件は、利用者(当時33歳・男性)が、スーパーマーケットを訪れた際、レジ前通路を歩行中、床に落ちていたかぼちゃの天ぷらを踏んで転倒し、右膝を負傷した事件。

【結論】

利用者に5割の過失相殺を認め、スーパーに約57万円の損害賠償責任(信義則上の安全管理義務違反の不法行為)が認められました。

【論点】

1 スーパーに責任は有るか?

簡単に言うと、「(1)天ぷらがレジ前に落ちてることを予想できたか」「(2)スーパーは転倒を回避することが不可能だったか」が論点となっています。

(1) 天ぷらがレジ前に落ちてることを予想できたか?

(スーパーの主張)

天ぷらが落ちているのは予想できない。

これまで同種事故(利用客が,レジ前通路で,他の利用客が落とした商品を踏んで転倒する事故)の発生を経験したことがなく、店長会議でも聞いたことがない。

(裁判所の判断)

利用客による惣菜のパック・袋詰めの仕方や運び方等に不備があり、惣菜を持ってレジに向かう途中で、誤ってレジ前通路の床面に惣菜を落とすことがあり得るのは容易に予想できる。(消費者庁によれば、店舗・商業施設での転倒事故845件のうち,落下物による店内での床滑り事故は67件と相当程度の割合を占める。)

(2)スーパーは転倒を回避することが不可能だったか?

①落ちてからの時間が短いか?

(スーパーの主張)

・申告されていないのだから、本件事故に近接するタイミングで床面に落とされた可能性が高い。だから気づくのは不可能。

(裁判所の判断)

・レジ前通路に天ぷらが落ちているのを見かけた利用客が、すぐに従業員にその旨申告するとは限らない。だから、従業員がレジ周辺の安全確認を行っていれば、天ぷらに気付いて対処することが時間的に不可能とはいえない。

②レジから死角になってたか?

(スーパーの主張)

・レジ内の従業員は、レジ台等の死角になるため、レジ前通路を視認することができず、本件事故が発生した7時台は混雑する時間帯であって、確認は困難。

(裁判所の判断)

・天ぷらは、レジ台からある程度離れた場所に落ちていたから、死角にはなっていない。

・スーパーには26名程度の従業員が勤務しており、手の空いた従業員がレジ周辺の安全確認を行うことが人員不足により不可能ではない。

・レジ前通路の端の利用客が並んでいないところや、並んでいる利用客の後方からレジ前通路の状況を目視により確認することが可能だった。

③小括

以上より、スーパーの従業員は、天ぷらに気付いて対処し、本件事故発生を回避することができた。

(3) 結論

よって、スーパーは、利用客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、混雑する時間帯に、従業員によるレジ周辺の安全確認を強化、徹底して、レジ前通路の床面に物が落下した状況が生じないようにすべき義務を怠った。

2 利用者の過失

もっとも、本件事故の発生については原告にも過失があり,その過失割合は5割。

・利用者も,歩行するに当たり足元への注意を払うべき。

・本件天ぷらの大きさや床面の色との違いや、年齢(事故当時33歳)から、落下物があることに容易に気付いて本件事故を回避し得た。

・利用者は、鞄と買い物かごを持って両手が塞がった状態であった。

3 損害額

合計 約118万円 × 過失相殺50% = 約57万円(弁護士費用10%込)

① 治療費 約11万円、② 文書料・医師面談料 約2万円、③ 休業損害 4万円(有給2日分/年収約486万円)、④ 通院慰謝料 100万円、⑤ 後遺障害慰謝料 0円

【弁護士の見解】

店舗で事故が事故が発生すると、このように、責任が認められた上、過失相殺となるケースが多く見られます。もちろん、事故が発生しないに越したことはありません。しかしながら、この判決が言うように「従業員によるレジ周辺の安全確認を強化,徹底する」のは、従業員に大きな負担をかけ、現実的には困難であるとも思われます(当たり前ですが、裁判官は経営をしたことがなく、被害者救済の気持ちも強いため、この辺りの事情は、なかなか理解してもらえないと思った方がいいでしょう。)。

店舗としては、責任を問われるか否かはさておき、転倒でお客様にご迷惑がかからないよう、転倒の可能性の高い原因(滑る床素材や雨の日の床ぬれ、水・油の落ちやすい場所)を把握し、お客様が笑顔でお買い物ができるよう、できることから対応していきたいですね。