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浜松まつりの注意から学ぶ「禁止」と「注意」のコミュニケーション
浜松まつりで、SNS投稿に関する注意文を巡り、以下のようなニュースがありましたので、「禁止」と「注意」のコミュニケーションについて、わかりやすい事例だと思い、解説します。
(以下引用)
浜松まつりで各町に配られた注意点の1つがこちら。
テレビ静岡:浜松まつり統監部がSNS投稿を禁止? 「発覚したら来年出場できなくなる」(https://news.yahoo.co.jp/articles/528b3acdf4a0fd6c30767b8fcc8cdc5db3ef4bf6)
「SNSへの投稿は注意してください。発覚した場合は来年出場できなくなるので、今年は我慢してください」
SNSへの投稿を禁止しているようにも読み取れ、参加者から「全て禁止するのはやり方が違う。観客には呼びかけておらず不公平ではないのか」などと不満の声が上がっていました。
この文書について担当者は「飲酒シーンなど禁止事項の投稿について呼びかけたもの。全面禁止にしたつもりはなく、捉え方の問題だが言葉足らずだった」と釈明しました。
(引用終わり)
浜松まつりには、各町への指導などを行う統監部という組織があります。
今年、 統監部は、飲酒禁止、ラッパ禁止などを注意していたようですが、「SNSへの投稿は注意してください。」だけならまだしも、「 発覚した場合は来年出場できなくなるので、 今年は我慢してください 」との文言から、浜松まつりに関する一般的な投稿であっても、SNSへの投稿を禁止するようにも読んだ人が多くいたようです。
禁止事項と注意事項
まず、禁止事項と注意事項は、異なります。
禁止は、「してはいけないこと」です。例えば、20時以降は、飲酒禁止というのは、飲酒してはいけませんよ、ということです。禁止事項の違反には、ペナルティーが課されることが多くあります。禁止は、「取り締まる側」と「取り締まられる側」の存在を前提とします。
一方、注意は、「気をつけること、気を配ること」です。注意を怠ると、自身または他者に不利益が生じるものを言います。たとえば、取扱説明書などで、「注意事項」が列挙されていますが、これは取り締まられることを必ずしも前提とせず、 自身または他者に不利益が生じないよう、気をつけることを求めることです。
浜松まつりの注意文の何が問題だったか
そうすると、浜松まつりの注意文は、何が問題だったか、クリアになります。
記事から推測すると、統監部としては、飲酒やラッパを禁止していた。
もし、浜松まつりの各町が、禁止事項に違反している場面を撮影し、SNSに投稿すると、違反が公知されることとなる。
または、禁止事項違反はしていないが、誤解される場面をSNSで投稿すると、非難されるおそれがある。そうすると、コロナ渦での、浜松まつりの開催について、疑義が生じてしまう。そのように考えていたようです。
つまり、統監部は、SNSの投稿内容に十分注意してください、という「注意事項」を言いたかったようです。
そうすると、「 発覚した場合は来年出場できなくなる 」というのは、あくまでも「飲酒やラッパなど禁止事項をしていることがSNSの投稿により発覚した場合」であって、浜松まつりに関する一般的なSNS投稿を禁止するものではありませんでした。
しかしながら、 「 SNSへの投稿は注意してください。 発覚した場合は来年出場できなくなる 」 とされると、ペナルティーと「今年は我慢してください」との文言からSNS投稿全般が「禁止事項」に読めてしまいます。
統監部の意図を正確に記載するなら、「SNSへの投稿は、内容や写真によっては禁止事項に関する誤解を生む可能性がありますので、内容には十分注意の上、投稿してください。」となります。こうすれば、受け手に誤解は生じなかったはずです。
ルールはその背景を説明しないと伝わらない
会社やコミュニティには、多くのルールがあります。ルールには、必ず何かしらの理由があり、他者との関係性を前提としています。
そうすると、ルールを伝えるときは、なぜそのルールがあるのか、背景を伝えなければ、そのルールの解釈が人によって幅が出てしまいますし、今回のときのように大きな誤解が生じます。
仮にルールが明確だとしても、背景を知らなければ、ルールを適用される側は腹落ちしませんので、運用が徹底されません。
もし、取り締まる側が、背景を説明できないようなルールであれば、そのルールは既に存在意義を失っています。
会社やコミュニティでルールを相手に伝えるときは、ぜひ、その背景にある事情まで含めて伝えてみてください。それが血の通ったルールにする第一歩です。