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【役員トラブル】取締役を解任したら、任期残り7年分の報酬を請求されたという失敗
事案
この会社は、2人の取締役がそれぞれ90%と10%を出資し設立されました。創業以来、定款では取締役の任期を10年と設定していました。
設立後、3年目に取締役の間で経営の方向性に相違が生じたため、90%出資者である社長が、もう一人の取締役を株主総会で解任しました。
すると、その取締役から、任期残り7年分の報酬である何千万円もの損害賠償請求を受けました。
裁判所は、解任については正当な理由がないとして、少なくとも任期残り4年分の支払を命じる和解を進め、会社はこれに応じる他ありませんでした。
弁護士の見解
事案のように、中小企業では取締役の任期を10年としている定款をみかけます。
しかし、取締役の任期10年は余りにも長すぎますし、事案のように取締役を解任すると、正当な理由が認められなければ、残りの報酬全額が損害として発生してしまうので、紛争のタネになりかねません(会社法第339条2項)。
ここにいう「正当な理由」とは、「当該取締役の職務の執行にあたり,不正の行為や定款又は法令に違反する行為があった場合,取締役が経営に失敗して会社に損害を与えた場合,当該取締役の経営能力の不足により客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合」をいうとされます。(東京地判平成25・5・30・2013WLJPCA05308011参照)
その上で、「単に株主と取締役との間で経営方針が異なるというだけでは,所有と経営の分離という株式会社の大原則からすると,会社の所有者である株主が経営の主体である取締役の職務に不当に干渉することを認めることとなり,認められない。」とされています。
まずは、定款で取締役の任期をできるだけ短くしておくこと(長くとも2年)、そして、取締役はできるだけ任期まで務めてもらい、任期を更新しない対応をすることが肝要です。
それでも取締役を解任すべき場合には、①取締役に不正の行為や定款又は法令に違反する行為があったか、②取締役が会社の経営に失敗して会社に損害を与えたか、③当該取締役の経営能力の不足により客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高いか、などを客観的に立証する必要があることを知っておきましょう。
単に主観的に折り合いがわるくなっただけでは、解任の正当な理由は認められませんので、取締役を解任せざるを得ない場合には、弁護士に事前に相談することを強くお勧め致します。