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自筆証書遺言の書き方|無効にならないための7つのポイントを弁護士が解説

「そろそろ遺言書を書いておこうかな」と思ったものの、こんな不安を感じていませんか?
- 遺言書って、手書きじゃないとダメなの?
- 書き方を間違えたら、無効になってしまうの?
- 日付や署名のルールがよくわからない
- 書き直したいときは、どうすればいいの?
- できれば費用をかけず、自分で書きたい
自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)は、紙とペンと印鑑があれば、ご自身で作成できる遺言書です。費用もほとんどかかりません。
ただし、書き方にはルールがあります。ルールを一つでも守れていないと、せっかく書いた遺言書が法的に無効になってしまうことがあるのです。
「想いを届けたかったのに、届かなかった」。そんな悲しい結果を防ぐために、長野法律事務所では、遺言書の作成を「問題が起きる前」からサポートしています。
この記事では、自筆証書遺言を書くときに押さえておきたい7つのポイントを、事例とともにわかりやすくお伝えします。
1. そもそも自筆証書遺言とは? 3つの遺言書の違い
遺言書には、おもに3つの種類があります。
自筆証書遺言は、遺言者ご本人がすべて手書きで作成する遺言書です。紙とペン、印鑑があれば、ひとりで作成できます。
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。費用はかかりますが、形式不備で無効になるリスクがほとんどありません。
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証人に存在だけを証明してもらう方式ですが、実務ではあまり使われていません。
この記事で取り上げる「自筆証書遺言」は、最も手軽に作成できる反面、書き方のルールを守らないと無効になるリスクがある遺言書です。
だからこそ、ポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
※公正証書遺言との比較について詳しく知りたい方は、【内部リンク:公正証書遺言の作り方に関する記事】もあわせてご覧ください。
2.【7つのポイント】自筆証書遺言の書き方で押さえるべきこと
民法968条では、自筆証書遺言の要件として「全文・日付・氏名の自書」と「押印」を定めています。これらを含めた7つのポイントを順番にご説明します。
ポイント① 全文を「手書き」で書く
自筆証書遺言は、遺言書の本文すべてを遺言者ご本人が手書きしなければなりません。
パソコンで作成したもの、家族が代筆したもの、録音や録画による遺言は、すべて無効です。
ボールペンや万年筆など、消えにくい筆記具で書きましょう。鉛筆やフリクションペンは、改ざんのおそれがあるため避けた方が安心です。
なお、2019年1月の民法改正により、財産目録に限ってはパソコンで作成することが認められました。通帳のコピーや登記事項証明書を添付する方法も可能です。ただし、財産目録の各ページには署名と押印が必要ですので、ご注意ください。
ポイント② 作成した「年月日」を正確に書く
遺言書には、作成した日付を正確に記載する必要があります。
「令和○年○月○日」のように、年月日が特定できる形で書いてください。西暦でも和暦でもかまいません。
注意すべきは「吉日」という表記です。 「令和7年3月吉日」のような書き方では、具体的な日付が特定できないため、遺言書そのものが無効になります。
これは実際の裁判でも無効と判断されたケースがある、よくある失敗のひとつです。
ポイント③ 氏名を自分の手で書く
遺言者の氏名も、必ず自分の手で書きます。ゴム印やスタンプは認められません。
法律上は通称やペンネームでも有効とされることがありますが、トラブルを防ぐためには、戸籍上の氏名をフルネームで書くのが安心です。住所もあわせて記載しておくとよいでしょう。
ポイント④ 押印を忘れない
署名のあとに押印することが必要です。押印がなければ無効になります。
法律上は認印でもかまいませんが、「本当に本人が押したのか」という疑いを防ぐために、実印の使用をおすすめしています。
印鑑がかすれてしまうと、押印の効力が認められないおそれもあります。朱肉を使ってしっかり押しましょう。シャチハタ(スタンプ印)は避けた方が無難です。
ポイント⑤ 財産の内容を正確に特定する
遺言書に書く財産は、第三者が読んでも特定できるように具体的に記載する必要があります。
不動産の場合は、登記簿(登記事項証明書)のとおりに、所在・地番・地目・地積などを正確に書きます。「今住んでいる家」のようなあいまいな表記では、どの不動産か特定できず、遺言として機能しない場合があります。
預貯金の場合は、金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号まで記載しましょう。
「すべての財産を○○に相続させる」という包括的な書き方も法律上は有効ですが、具体的に書いた方が、のちのちのトラブルを防ぎやすくなります。
ポイント⑥ 訂正の方法は厳格に守る
書き間違えた場合の訂正には、厳格なルールがあります。
正しい訂正方法は、次のとおりです。
- 訂正したい箇所に二重線を引く
- 近くに正しい内容を書き加える
- 訂正した場所に押印する
- 欄外に「○行目○字削除、○字追加」のように変更内容を書き、署名する
このルールに従っていない訂正は無効になり、訂正前の内容がそのまま残ってしまいます。
正直なところ、訂正のルールはかなり厳しいです。書き間違いが多い場合は、最初から書き直す方が安全です。
ポイント⑦ 封筒に入れて保管する(封印は義務ではないが推奨)
法律上、遺言書を封筒に入れる義務はありません。しかし、改ざんや汚損を防ぐために、封筒に入れて保管することを強くおすすめします。
封筒の表面に「遺言書」と書き、裏面に作成日と氏名を記載しておくとよいでしょう。
なお、封印のある遺言書を家庭裁判所の検認手続きなしに開封すると、5万円以下の過料(罰金のようなもの)が課されることがあります。封筒に「開封せず家庭裁判所に提出すること」と注記しておくと、ご家族にとって親切です。
3. こんな遺言書は無効になる|よくある失敗事例
事例①:パソコンで本文を作成したケース
登場人物と背景 Aさん(78歳)は、妻と長男・長女の4人家族でした。自宅の土地・建物(評価額約2,500万円)と預貯金約1,500万円の財産がありました。パソコンが得意だったAさんは、きれいに仕上げたいと考え、遺言書の本文をワープロソフトで作成し、署名だけを手書きで行いました。
何が起きたか Aさんが亡くなったあと、遺言書が見つかりました。しかし、本文がパソコン印刷であったため、長女が「これは法的に無効ではないか」と指摘。家庭裁判所での調停に約1年を要し、弁護士費用や調停費用をあわせると約80万円の出費となりました。
結果 遺言書は無効と判断され、法定相続の割合で遺産分割が行われました。Aさんが「長男に自宅を継いでほしい」という想いは、かなえられませんでした。
➡ 自筆証書遺言の本文は、必ずすべて手書きで作成しましょう。パソコンで作成できるのは「財産目録」だけです。
事例②:日付を「吉日」と書いたケース
登場人物と背景 Bさん(82歳)は、3人の子どもがいました。預貯金約4,000万円を、長年介護をしてくれた長女に多く残したいと考え、自分で遺言書を作成しました。日付の欄には「令和5年8月吉日」と記載しました。
何が起きたか Bさんの死後、次男が「日付が特定できないので無効だ」と主張。長女は遺言の有効性を主張しましたが、「吉日」では日付が特定できないという最高裁の判例もあり、最終的に遺言書は無効と判断されました。
結果 長女が介護に費やした10年以上の労力は、遺言書には反映されませんでした。法定相続分どおりの分割となり、きょうだい間の関係にも溝が生まれてしまいました。
➡ 日付は「○年○月○日」と、必ず具体的に記載してください。「吉日」は無効のリスクがあります。
4. 自筆証書遺言書保管制度を活用しよう
2020年7月からスタートした「自筆証書遺言書保管制度」をご存じでしょうか。
これは、ご自身で作成した自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)に預けることができる制度です。
この制度には、大きなメリットがあります。
まず、紛失や改ざんのリスクがなくなります。法務局が原本を安全に保管してくれるため、自宅での保管に伴う心配がありません。
次に、家庭裁判所での検認手続きが不要になります。通常、自筆証書遺言は遺言者が亡くなったあとに検認が必要ですが、法務局に保管されている場合は不要です。ご遺族の手続きの負担が軽くなります。
さらに、保管時に形式面のチェックを受けられます。法務局の担当者が、日付・署名・押印などの形式要件を確認してくれます(ただし、内容の適切さまでは確認してもらえません)。
保管の手数料は1通あたり3,900円です。この費用で安心が得られるなら、ぜひ活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
※自筆証書遺言書保管制度の詳しい手続きについては、【内部リンク:遺言書保管制度に関する記事】で解説しています。
5. 弁護士の視点|遺言書は「争いの種」ではなく「家族への手紙」
「遺言書を書く」と聞くと、どこか重苦しいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。「まだ元気なのに」「縁起でもない」と感じる方もいるでしょう。
しかし、私たちが日々ご相談を受けるなかで感じるのは、遺言書があったからこそ、家族が穏やかに過ごせたというケースが少なくないということです。
逆に、遺言書がなかったために、仲の良かったきょうだいが疎遠になってしまった。そんな悲しいケースも数多く見てきました。
遺言書は、法的な書類であると同時に、ご家族への最後のメッセージでもあります。
自筆証書遺言には「付言事項」(ふげんじこう)を書くことができます。付言事項とは、法的な効力はないけれど、遺言書に添える手紙のようなものです。
「長女には介護で苦労をかけた。感謝の気持ちを込めて、多めに残したい」 「きょうだいで争わず、これからも仲良く過ごしてほしい」
こうした一言があるだけで、遺された家族の気持ちはずいぶん違います。
形式的なルールを守ることはもちろん大切です。でも、「何を伝えたいか」という想いを出発点にしていただきたい。それが、弁護士としての私の願いです。
もし、ルールに不安がある場合は、内容面のチェックも含めて弁護士に相談されることをおすすめしています。せっかくの想いが形式不備で届かなかった、ということがないように、一緒に確認していきましょう。
※付言事項の書き方や効果的な活用法については、【内部リンク:付言事項の書き方に関する記事】で詳しくご紹介しています。
6. まとめ
この記事では、自筆証書遺言の書き方について、7つのポイントをお伝えしました。
改めて整理すると、以下のとおりです。
- 全文を手書きで書く(財産目録のみパソコン可)
- 作成日を「年月日」で正確に書く(「吉日」はNG)
- 氏名をフルネームで自書する
- 押印を忘れない(実印が望ましい)
- 財産の内容を具体的に特定する
- 訂正は厳格なルールに従う(迷ったら書き直す)
- 封筒に入れて適切に保管する(法務局の保管制度も活用)
遺言書の作成は、「もしものとき」の準備ではありますが、それは決して後ろ向きなことではありません。
「家族の関係にヒビが入る前に備える」。それが、いちばん穏やかな相続のかたちだと、私たちは考えています。
「家族のこと、ちゃんと考えたい」。そう思ったときが、最初の一歩です。
まずはお気軽に、長野法律事務所の無料相談をご活用ください。遺言書の書き方から、ご家族の状況にあわせた準備のしかたまで、一緒に考えていきましょう。
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