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ルールについて考える(橋下徹著「最強の思考法フェアに考えればあらゆる問題を解決する」)

2022.09.25
カテゴリ: お知らせ

朝日新聞出版「最強の思考法フェアに考えればあらゆる問題は解決する」橋下 徹 著

同書は、弁護士の橋下徹氏が、ロシア・ウクライナ情勢や安倍元首相の国葬を例に、「フェアの思考」、すなわち、相手を批判するには、自分の中で矛盾しない一貫したスタンスが必要であること、フェアの思考が自身の主張の説得力を増すこと、そして、リーガルマインド(「ルールのそもそも論を考える」)とは何か、を説いた一冊です。

現場無視のルールが温存される理由

自身の主張を展開する方、交渉する機会のある方には、ぜひお読みいただきたいのですが、この本の中で、会社の経営上、特に大切だと思ったのは、「現場無視のルールが温存される理由」の節です。

社内ルールって、よかれと思って作ったはいいものの、守ることができないルールばかりができて、どれも形骸化して守られなくなる。社会人なら、思い当たる節がある方も多いかと思います。

ルールが形骸化していくと、不祥事や事故に繋がり、結果的にお客様に迷惑をかけ、自社を存亡の危機に立たせることになります(「知床遊覧船事故」や「牧之原川崎幼稚園園児置き去り事故」など)。

もちろん、ルールは危機管理だけでなく、業績を伸ばすために整備している会社も多くあると思います。

ルールの形骸化が常態化するのは、コンプライアンス的に最悪


橋下氏は、

「ダメな組織ほど、ルールを作りっぱなしにして、その形骸化が起きている。」「コンプライアンス的には最悪の状態だ。すぐにそのルール自体を見直さなければいけない」

と喝破します。

現場は・・・とにかく目の前の仕事を回すことを優先し、ルールを無視することになり、それが常態化する。」「そして、経営陣や管理職は現場のルール無視に気づかなかったり見て見ぬ振りをしたりする。」という最悪な状態になり、事故が起きてから、守れないルールを作った経営陣が一方的に、「なんでルールを守ってなかったんだ!」と、現場に責任転嫁する起こる羽目になります。

たとえば、役所で、外部メール送信する際、宛先ミスが起こると、対処方法として、「チェックの徹底・強化」(ダブルチェック、取りプリチェック)が提案されてくる。しかし、本当に全部やっているのか確認したところ、案の定、他の業務に支障が出るということで全部していなかった、という例、あるあるですね。

現場の声だけでルールを変えることが難しい


ですが、「現場の声だけで経営陣を動かしてルールを変えるというのは相当難しい。」

それは、そうですよね。多くの現場の人は、経営陣に対して、「ルールを変えましょう」、なんて言えると思っていないんですから。では、どうすればいいのか?

リスクにメリハリをつけて、守れるルールを現場と対話して作る


大阪府のトップだった橋下氏は、ルールを守っていない現場に対して、「無理なら無理と言ったほうがいい。もし全部できないんだったら、きちんと守れるルールに変えなきゃいけないんじゃないですか?ミスを完全にゼロにするには膨大な労力が必要になります。ここは発想の転換でミスはあるという前提で最大の効果を発揮する新しいルールを作りましょう。」と伝えていたそうです。

ルールを作る際には、それが現場で必ず守られるように実効性・実効性を確保することに頭を使うことが重要で、「事案の性質・軽重に応じてルールを考える」でいい、と割り切ります。

もちろん、後で謝れば済む事案と、謝っても済まない事案とを区分けする。前者は通常の業務プロセスの中で最善の注意を払う一方、後者には、特別の人員と特別のチェックプロセスを設定することで、リソースの配分にメリハリを付ける。

そのためには、経営陣が、リスクを適切に評価して、命や莫大な損害に繋がる深刻な事故と、謝れば済む軽微な事故を区別する必要があります。

ルール作りに基づく対応をレベルアップするには、役割分担を重視すること


現場のルールは、組織のトップではなく、現場で設定していくしかありません。

ただし、何でもボトムアップでルールが作られる訳ではないから、トップが「ボトムアップ型の行動基準・ルールの見直し・設定をせよ!」という号令をかけることも必要です。

そして、一定期間ごとに、現場発の検証・見直しが行われるようにシステム化することも、トップや経営陣の仕事です。

この節の最後に、「ルールは『作ること』が目的ではない。それを『実行・実効して結果を出すこと』が目的だ。このルールを 実行・実効する上では、結局のところ、経営陣と現場とのコミュニケーションが重要なポイントになる。」と言っているところに、目的を達成する為に現場とコミュニケーションをとるトップの姿勢に、ルール運用の本質があると思いました。