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なぜ教訓は生かされなかったか?(牧之原川崎幼稚園 園児バス置き去り事件)

2022.09.07
カテゴリ: お知らせ

川崎幼稚園HP

2021年7月に福岡県の保育園で、5歳だった男児が熱中症で死亡する事件が起きてから、わずか1年後。

またしても、こども園で、3歳の女の子が通園バスの車内に取り残され、熱中症で死亡した事件が起きてしまいました。

なぜ、教訓は生かされなかったのか?

記者会見からは、マニュアルの不備と、その運用がなし崩し的に杜撰になっていく様子がうかがえました。

2021年8月の文部科学省の通知

文部科学省は、福岡県の事故を受け、2021年8月に、幼稚園や保育園に安全管理の徹底事項を通知しています。

① 当園時や散歩の前後など、場面が切り替わる際に、複数の職員で子供の人数を確認すること

② 子供が欠席している場合は、保護者に速やかに確認し、職員の間で情報を共有すること。

③ 送迎バスを運行する場合は、運転を担当する職員のほかに子供の対応ができる職員が同乗するのが望ましい。

④ 子供の乗車時および降車時に、座席や人数の確認を実施し、その内容を職員の間で共有すること。

 

このように、国は、複数職員での確認や、保護者への欠席連絡などを徹底するよう通知していました。

事件当日の状況

事件当日、本来の運転手が休んだため、急遽、73歳の理事長が運転を代わったといいます。

しかしながら、一緒に乗っていた乗務員はいちばん小さな園児とともに降り、運転していた理事長も亡くなった女の子が降りていないことを確認しないまま、バスを離れてしまったということです。

送迎バス利用者の登園打刻はまとめて行われていたため、おそらく、この園児は登園扱いになっていました

一方、教室の先生は、女児がいないことを認識し、欠席したと考えていたそうです。

そして、そのまま女児は、5時間、高温のバスの中に置き去りにされ、熱中症で亡くなりました。

何が問題だったか?


1 2021年の国の通知を受けたにもかかわらず、同園は、安全管理のマニュアルを見直していませんでした

同業他社が大きな失敗を侵し、報道されたときこそ、自社の安全性を点検する危機感を持たなければならないのに、自分事とすることができなかった、リスクに対する理事長の意識の低さを痛感します。


2 次に、本来の運転手が休んで理事長が運転するなど、やむを得ないイレギュラーな時こそ、ミスをしないようマニュアルを徹底すべきでした。

「いつも運転していなかったので、不慣れだったのが原因だと思います。園長という立場からかもしれないが、一緒に乗っていた補助の職員にお任せしていて、気が回らなかった。当時、病院で待ち合わせの予定があり、次の行動に移さないといけないと思っていた」

NHK「通園バスで園児死亡 認定こども園会見 理事長らが謝罪」


3 そして、園児を数えることなく、思い込みで、全員を登園扱いにしてしまうという杜撰さが目立ちます。

「送迎バスを利用する場合は保護者が打刻できないため、補助員がまとめて登園扱いにしていたという。」

牧之原の園児死亡事故 ずさんな出欠管理 アプリ利用も把握至らず


4 最後に、担任の先生は、欠席していることに気づいていたため、保護者に連絡をすれば、事故に気づくことができたかもしれないのに、連絡することを怠り、最後の砦をスルーしてしまいました。

私たちは何を学ぶべきか?


まず、命や身体、人の財産を預かる仕事では、マニュアルの整備が、絶対に必要です。中小企業ではマニュアルが存在しない危険な仕事も多くありますが、これを機に、ぜひマニュアルを作成することを決意しましょう。

次に、マニュアルは、常にアップデートしていくものです。自社のヒヤリハットや、報道などから、都度都度、アップデートしていきましょう。

そして、最も重要なのは、マニュアルを守りつづけていくことです。最初は守っていても、「忙しい」とき、「イレギュラー」なときは、マニュアルをすっ飛ばし、それでも大丈夫なことが続くと、なし崩し的にマニュアルが有名無実化していきます。

マニュアルを守るためには、リーダーがこれを言い続けること、そして、自分が言い続ける自信がなければ、予め外部の監査役や顧問弁護士にマニュアルの徹底を定期的にチェックしてもらいたい、と伝えておくことです。

ぜひ、業界の他社の失敗例を生かし、同じ失敗を自社では発生させないよう、安全管理をアップデートし続けましょう。