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【建設業者様向け】2024年~2026年 法改正ラッシュを乗り切る!「あうんの呼吸」が通用しなくなる未来への備え

長野法律事務所の弁護士、長野修一です。
建設業界の皆様にとっては、まさに「激動」とも呼べる法改正の波が押し寄せています。
2024年の時間外労働の上限規制(2024年問題)に続き、2025年の「標準労務費」勧告、そして2026年1月1日からは下請法が改正され、新たに「取適法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」として施行されました。
「現場が動いてから契約書を作る」
「支払いはいつもの手形で」
「工期は現場の頑張りでなんとかする」
長年、業界を支えてきたこうした「あうんの呼吸」や慣習が、今後は通用しなくなるどころか、明確な「違法行為」として経営リスクになる時代が到来しました。
今回は、建設業法・フリーランス保護法・そして新法「取適法」の3つの視点から、経営者様が絶対に知っておくべきポイントを「よくあるNG事例」とともに解説します。
1. 「着工後」の契約締結は絶対NGです
建設業法第19条は、工事請負契約の基本原則を定めています。ここで最も注意すべきは、「着工前契約」の徹底です。
【ここが危険!NG事例】
- 「急ぎの追加工事だから、先に工事を進めておいて。契約書(注文書)は来月まとめて出すから」
これは建設業法第19条違反の典型です。単なる書類の不備では済みません。契約書がない状態で工事を進めさせることは、「不当に低い請負代金の押し付け(指値)」や「工期の強要」の温床とみなされ、行政の監視が非常に厳しくなっています。
特に相手が一人親方(フリーランス)の場合、フリーランス保護法違反のリスクも重なり、ダメージが倍増します。
2. 「予算ありき」の指値発注と「標準労務費」
「元請けから降りてきた予算がこれしかないから」と一方的に価格を決める「指値(さしね)」は禁止されています。さらに、2025年からは国交省による「標準労務費」の基準が適用されています。
【ここが危険!NG事例】
- 「うちはずっとこの単価でやってもらっているから」と言って、法定福利費(社会保険料等)を含まない金額で発注する。
社会保険料等の会社負担分を含まない金額での発注は、直ちに違法な「原価割れ」とみなされる傾向にあります。「標準的な労務費の基準」を著しく下回る契約は、是正勧告や企業名公表、最悪の場合は営業停止処分の対象となり得ます。「昔からの付き合い」という言い訳は通用しません。
3. 「週休1日」前提の工程表はリスクの塊です
働き方改革関連法の適用に伴い、「著しく短い工期」の禁止(第19条の5)も重要度を増しています。
【ここが危険!NG事例】
- 下請業者が「その工期でやります」と合意したので、週1日休み(4週4休)計算の工程表で契約した。
たとえ合意があってもNGです。客観的に見て労働基準法(4週8休や残業上限)を遵守不可能な工程であれば、元請負人の責任(優越的地位の濫用)が問われます。「合意書にハンコをもらえば免責される」という考え方は捨て、これからは「4週8休」を前提とした工程管理が必須です。
4. 最大の落とし穴「検査期間」と「60日払い」の衝突
2024年11月に施行されたフリーランス保護法は、一人親方との取引において、建設業法との「ルールの衝突」を引き起こしています。
【ここが危険!NG事例】
- 一人親方に対し、「月末締め、翌月20日に検査完了、その翌月末払い」としている。
一見問題なさそうに見えますが、フリーランス保護法違反の可能性が高いです。
建設業法では検査期間として最大20日が認められていますが、フリーランス保護法では報酬支払期日は「給付を受領した日(現場完了日)から60日以内」です。
「検査期間もこの60日カウントに含まれる」のがポイントです。もし現場完了から検査に20日かけてしまうと、支払までの残り時間は40日しかなく、従来のサイクルでは支払遅延(年利14.6%)となってしまいます。
5. 新法「取適法」は建設業に関係ない?意外な落とし穴
2026年施行の「取適法(旧下請法)」ですが、建設業者が行う「建設工事の請負契約」は、建設業法が優先されるため原則として対象外です。
しかし、ここには「2つの大きな落とし穴」があります。
① 現場に及ぶ「物流・運送」の規制
今回新たに「特定運送委託(物流)」が規制対象に追加されました。
【ここが危険!NG事例】
- 現場の搬入スケジュールを管理せず、資材搬入のトラックを現場前で2時間以上待機させた(荷待ち時間)。
- ドライバーに、契約にない荷降ろしや片付けを手伝わせた(附帯作業の強要)。
直接の契約関係がなくても、現場側の都合で長時間の「荷待ち」を発生させることは、サプライチェーン全体の法令違反につながります。「運送はメーカー手配だから知らない」では済まされません。
② 「価格転嫁」拒否の禁止
昨今の資材高騰を受け、価格転嫁(値上げ)協議への対応も厳格化しています。
【ここが危険!NG事例】
- 「契約書で『請負代金は変更しない』と定めているから」と、価格協議を門前払いした。
こうした対応は建設業法違反のリスクを高めます。現在は民間工事であっても「スライド条項(物価変動に伴う変更条項)」の活用が推奨されています。「契約時の金額が絶対」という考えを捨て、協議には誠実に応じることが求められます。
まとめ
これからの建設業経営において、以下の点は「知らなかった」では済まされない重要事項です。
- 現場先行・契約後追いの完全廃止
- 法定福利費を無視した指値発注の禁止
- 「4週8休」を前提とした適正工期の設定
- 一人親方への支払いは「現場完了から60日以内」に着金
- 資材搬入(物流)の「荷待ち時間」削減への現場協力
- 「スライド条項」を活用し、価格協議から逃げない
コンプライアンス対応はコストではなく、「選ばれる会社」になるための投資です。
当事務所では、貴社の工事請負契約書や発注フローが、最新の法改正(建設業法・フリーランス保護法・取適法)に対応できているかのリーガルチェックを行っております。
「自社の契約書はインフレに対応できているか?」「一人親方との取引を見直したい」などのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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