NEWS & BLOG

ニュース・ブログ

長野法律事務所ホームニュース・ブログ法人のお客様下請け企業が直面する赤字見積もり問題

下請け企業が直面する赤字見積もり問題

2024.03.08
カテゴリ: 法人のお客様

弁護士の長野修一です。

このブログでは、日産自動車が、下請企業に対して、不当に減額をしていたとして公正取引委員会から勧告を受けたとのニュースから、不当な買いたたき、減額について、解説します。

日産自動車に下請法違反で勧告、30億円不当減額 公取委

自動車部品を製造する下請け企業36社への支払代金約30億2300万円を不当に減額したとして、公正取引委員会は7日、日産自動車に下請法違反で再発防止を勧告した。減額の認定額としては過去最高となる。同社に下請法の順守のための定期的な監査などを求めた。
(中略)
公取委によると、自動車・トラック・バス製造業で減額に関する下請法違反の勧告は公表を始めた2004年以降で14件目。日産と同様に発注代金から「一時金」や「口銭」の名目で不当に支払金額を減額する事例も目立つといい、公取委は日本自動車工業会に再発防止を申し入れる。

日経新聞電子版 2024年3月7日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE06AY30W4A300C2000000/

買いたたきについて、よくあるご相談

当事務所には、このようなご相談がよくあります。

「当社は、部品製造会社で、A社の下請けです。 A社から、赤字にしかならない安い見積もりを出されました。 私が、赤字になるという理由で断ると、それだと今後、発注することができないと言われました。 A社は、当社の売上の半分を占めており、発注がなくなるととても困ります。 どうすればいいでしょうか。」

はじめに

製造会社を経営されている皆様、赤字見積もり問題で悩んでいませんか?

今回のブログ記事では、弁護士として、以下の2つのポイントに焦点を当て、問題解決に向けた具体的なアドバイスを提供します。

  1. A社からの赤字見積もり:法的側面からの解説
  2. 具体的な解決策:交渉、代替案、法的措置

1. A社からの赤字見積もり:法的側面からの解説

下請法では、下請け企業が不当に低い価格で仕事を請け負わされることを防ぐために、下請に対する買いたたきのや減額の禁止を定めています。

もっとも、A社の見積もりが下請法に違反しているかどうかは、個々の状況によって判断が異なります。

下請法が適用される場合

親事業者とは、次のいずれかに該当する事業者を指します。

  • 資本金3億円1円以上の会社が、物品の製造・修理、情報成果物の作成、役務の提供を、資本金3億円以下の会社に委託する場合
  • 資本金1千万1円以上3億円以下の会社が、資本金1千万円以下の会社に物品の製造・修理、情報成果物の作成、役務の提供を委託する場合

まずは、親事業者の資本金をチェックしてみましょう。
当てはまれば、下請法が適用される可能性があります。

買いたたきの判断基準

次に、買いたたきに該当するかどうかは、

  • 著しく低いかどうかという価格水準
    (「通常支払われる対価」と「下請事業者の給付に対して支払われる対価」との乖離状況や必要に応じその給付に必要な原材料等の価格動向など)
  • 不当に定めていないかどうかという下請代金の額の決定方法
    (下請事業者と十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法)
    や対価が差別的であるかどうか等の決定内容

を勘案してケースバイケースで当不当を総合的に判断します。

このため,どのような手続を経て取り決めたのか(決定方法)などにポイントを置いて行為の外形から下請法違反のおそれがあるかを判断することとしています。
具体的には,下請代金の額の決定に当たって,下請事業者の事情を十分考慮し,協議を尽しているかどうかが、重要です。

これらの基準を満たす場合、A社の見積もりは下請法違反となる可能性があります。

2. 具体的な解決策:交渉、代替案、法的措置

交渉

まずは、A社と交渉を試みましょう。

  • 見積もりの内訳を詳細に確認し、具体的な根拠に基づいて、赤字になる理由を説明する
  • 代替案を提示する:コスト削減のための共同作業、納期の延長、一部工程の請負辞退など
  • 下請法違反の可能性を匂わせる

代替案

A社との交渉がうまくいかない場合は、以下の代替案を検討しましょう。

  • 他の取引先を探す
  • 自社の製品やサービスを開発・販売する
  • 事業を縮小・撤退する

法的措置

上記の解決策を試しても問題が解決しない場合は、最終手段として、下請法に基づいて公正取引委員会や中小企業庁に指導を求めたり、裁判所に訴訟を提起したりすることができます。

弁護士への相談

赤字見積もり問題で悩んでいる場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、個々の状況を分析し、適切な解決策をアドバイスすることができます。

まとめ

A社からの赤字見積もり問題は、下請け企業にとって深刻な問題です。しかし、適切な対応を取ることによって、解決することができます。

今回のブログ記事を参考に、問題解決に向けて一歩踏み出してください。

参考情報

公正取引委員会 ポイント解説 下請法
https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/pointkaisetsu.pdf