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業務上の指導とパワハラ:どこからが境界線?

はじめに
職場で部下を指導することは、業務を円滑に進め、個人の成長を促す上で非常に重要です。しかし、時に「これは指導なのか、それともパワハラなのか」と線引きに悩むケースがあるかもしれません。今回は、業務上の指導がパワハラと見なされる境界線について、法的観点から解説します。
1. 業務上の指導の適法性とは
まず、業務上の指導が適法であるとされるのは、部下の育成や、業務を円滑に進めることを目的として行われる場合です。一般的に、このような目的で行われる指導は、パワハラにはあたりません。
指導が適法であるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
- 業務上の目的の有無
- 指導や指示の態様
- 指導の頻度
- 対象者の認識
たとえ、業務遂行上客観的に必要な行為であったり、指示や指導の行為が受け手に「人格的利益を侵害する」と評価され得るものであったりしても、それが合理的な理由に基づき、社会通念上相当な範囲を逸脱しない限り、パワハラとは認められないとされています。
この判断基準については、最高裁判決平成21年10月16日判決(判例時報2050号5頁)なども参照されます。
2. 業務上の指導がパワハラになるケース
では、どのような場合に業務上の指導がパワハラと見なされるのでしょうか。ポイントとなるのは、指導・監督行為が本来の目的から逸脱しているか、あるいはその態様や頻度が社会通念上許容される範囲を大きく逸脱しているかです。
具体的には、以下の2つのパターンが考えられます。
- 目的の逸脱: 部下の育成目的ではなく、人格や尊厳を傷つけることを目的として行われた言動。
- 態様・頻度の逸脱: 目的が正当であったとしても、その言動の態様や頻度が、社会通念上許容される範囲を大きく超えている場合。
具体的な裁判例を見てみましょう。
【山梨総合サービス事件】
この事件では、上司が部下に対し「お前なんか辞めてしまえ」「お前がいなくても仕事は回る」「お前は役に立たない」といった発言を繰り返しました。裁判所は、これらの発言が上司の指導の範囲を逸脱し、パワハラに該当すると認定しました。
被害者が200万円の退職金を受け取る合意をしていたにもかかわらず、これらの発言によって不法行為が成立し、会社の責任が認められています(東京地判平成21年10月27日判決 判例時報2070号144頁)。
【光洋精機事件】
別の事例では、上司が部下に対して「使い物にならない」「給料泥棒」「会社に来るな」「辞めてしまえ」「死ね」などと発言したことが問題となりました。
裁判所は、これらの発言が上司の指導の範囲を逸脱し、被害者の人格的尊厳を侵害するパワハラ行為であると判断しています(大阪地判平成22年7月15日判決 判例時報2105号82頁)。
これらの事例からわかるように、単なる厳しい口調や叱責だけでなく、人格否定や退職を促すような言動は、指導の範疇を超えたパワハラとして認定される可能性が高いと言えます。
まとめ
業務上の指導とパワハラの境界線は、個別の事案ごとに慎重に判断される必要があります。指導の目的が正当であっても、その方法や程度が社会通念上不相当であれば、パワハラと認定される可能性があります。
もし、ご自身や職場で「これはパワハラではないか」と疑問に思われた場合は、一人で抱え込まず、専門家である弁護士にご相談ください。適切な対処法を見つけるお手伝いをいたします。
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