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長野法律事務所ホームニュース・ブログ契約書の作成・レビュー【2026年1月施行】「下請法」から「取適法」へ!手形廃止や300人基準など、企業が今すぐ見直すべき5つの変更点

【2026年1月施行】「下請法」から「取適法」へ!手形廃止や300人基準など、企業が今すぐ見直すべき5つの変更点

2026.01.09
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新年あけましておめでとうございます。長野法律事務所の弁護士、長野修一です。

さて、経営者の皆様にとっては大きな転換点となる法律が、ついに2026年1月1日より施行されました。
長年「下請法」として親しまれてきた法律が改正され、「取適法(とりてきほう:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)」へと名称も新たに生まれ変わりました 。

「名前が変わっただけでしょう?」
「うちは資本金が小さいから関係ない」

もしそのようにお考えであれば、非常に危険です。
今回の改正は、「手形払いの禁止」「従業員数による規制対象の拡大」など、企業の資金繰りや実務に直結する変更が含まれています。

今回は、施行直後の今だからこそ確認しておきたい重要ポイントを、「よくあるNG事例」とともに解説します。


1. 「従業員300人以上」なら資本金に関わらず対象になります

まず、法律の適用範囲(誰が守らなければならないか)が大きく変わりました。
これまでは、「親事業者(委託事業者)」にあたるかどうかは、主に「資本金の額(例:3億円超か否か)」で判断されていました 。

しかし今回の改正で、「常時使用する従業員の数が300人以上(一部取引は100人以上)」の事業者も、資本金の額に関わらず規制の対象となりました 。

【ここが危険!勘違い事例】

「うちは持株会社の下の事業会社で、資本金は1,000万円しかないから対象外だ」

これからはNGです。
たとえ資本金が小さくても、従業員数が300人を超えていれば、今後は「委託事業者」として扱われます。
また、今回から「特定運送委託(物流)」も対象取引に追加されています 。運送会社への委託がある企業様は特にご注意ください。

2. 「手形払い」は原則禁止になります

今回の改正の大きな目玉の一つが、支払手段の制限です。
これまで認められていた「手形払い」が禁止されました 。 また、電子記録債権(でんさい等)であっても、「支払期日(60日以内)までに現金化することが困難なもの」は禁止されます 。

【ここが危険!NG対応】

「業界の慣習で、120日サイトの手形で支払っている」

これは明確な法律違反です。
2026年1月以降、違反行為(支払遅延等)として行政指導の対象となります。早急に現金振込(銀行振込)への切り替えが必要です。

3. 「月末締め翌々月払い」などの長期サイトは違法です

代金の支払期日は、「物品等の受領日(役務提供日)から起算して60日以内」とすることが義務付けられています 。 ここでの落とし穴は、起算点が「請求書が届いた日」ではなく「モノが届いた日」である点です。

【具体的なNGケース】

「毎月20日締め、翌々月20日払い(現金)」のサイクル

  • 4月1日に商品を納品(受領)
  • 6月20日に支払い

この場合、経過日数は「80日間」となり、60日ルールの違反となります。
「今まで文句を言われたことはない」としても、今後は違法状態となり、遅延利息(年率14.6%)の支払義務が生じます 。

4. 「振込手数料は貴社負担」の記載はNGです

これまで請求書などでよく見かけた「振込手数料は受取人負担」という商慣習。
これも今回の改正(および運用基準)により、明確に「委託事業者が負担すべきもの」とされました。

【よくある誤解】

「契約書で『手数料は下請負担』と合意してハンコも貰っているから大丈夫では?」

答えは「NO」です。
たとえ契約書で合意していても、その合意自体が法の趣旨に反すると判断されるリスクが高まっています。金額の多寡にかかわらず、振込手数料を差し引く行為は直ちに中止してください。

5. 「価格転嫁」の協議拒否は禁止行為です

昨今の原材料費高騰を受け、受託事業者から「値上げしてほしい」という申し入れがあった場合、これに誠実に応じる義務があります。
改正法では、「協議に応じない一方的な代金決定」が新たに禁止行為として明記されました 。

【こんな対応をしていませんか?】

  • 「予算が決まっているから無理」と門前払いする。
  • 「値上げするなら他社に切り替える」と示唆して諦めさせる。
  • 協議の場を設けず、メール一本で回答を済ませる。

これらは「買いたたき」や「協議拒否」として法違反になります 。


【朗報】発注書のメール送付が「承諾不要」になりました

規制強化ばかりではありません。実務的な緩和もあります。
これまで発注書(3条書面)をメールで送るには、相手方の「事前の承諾」が必要でしたが、改正後は承諾不要でメール交付が可能になりました 。
※ただし、相手方が書面を希望する場合は配慮が必要です。

まとめ

今回の「取適法」への改正は、単なる名称変更ではありません。

  1. 300人以上の企業は資本金に関係なく対象
  2. 手形払いの禁止
  3. 支払サイトは受領から60日厳守
  4. 振込手数料は発注側負担
  5. 価格協議の拒否は違法

これらの変更点は、知らなかったでは済まされない重大なコンプライアンス事項です。

当事務所では、現在の発注書や基本契約書が新法(取適法)に対応できているかのリーガルチェックを行っております。
「自社のフォーマットが不安だ」「従業員基準で対象になったかもしれない」など、取引適正化に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

本年も、地域の企業の皆様の健全な発展を法務面からサポートしてまいります。