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退職金支給の株主総会決議をしなかったという失敗
事案
あるメーカーを退任した創業者の失敗談です。
(※守秘義務の関係で実際の事実とは異なります。)
創業者として、40年間、会社を成長させ続けてきた創業社長は、娘婿に事業を承継する際、退職金として、約1億円を会社から受領しました。
しかしながら、承継後も、経営に口を出さずにはいられず、数年後、創業社長と娘婿の社長との間で経営についての大きな食い違いがありました。
その際、娘婿の社長より、創業社長が退職金給付に関する株主総会決議がなかったことが判明し、その社長は、退職金の全額返還を会社から求められました。
弁護士の見解
取締役のお手盛り防止のため、報酬の額は、株主総会決議で定めることとされています(会社法361条1項)。
退職金支給も、役員の報酬として株主総会決議が必要であることは、判例上、確立しています(最判昭和39・12・11民集18巻10号2143頁)。
退職金支給の株主総会決議がなければ、後の株主総会で追認の決議をされない限り、退職金は返還しなければなりません。
したがって、この創業社長は、自分が大株主である退職時に株主総会決議をしておかなければなりませんでした。
たしかに、退職金を株主総会で決議すると、支払われる額が他の株主に明らかになってしまうため、これを躊躇する取締役もいます。
そこで、予め退職金規程を定めておき、株主総会において、退職金規程に則り退職金を支給する旨の決議でも構わないというのが、通説です。
退職金をもらう予定がある取締役は、予め退職金規程を定め、退任の際には、必ず株主総会で決議をしておきましょう。